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アイビー便り

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第四話 50代からの趣味 Tさんの話

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第4話 『50代からの趣味 Tさんの話』

記:百花玲

昭和から平成にかけてお仕事をされていた方々には、『24時間戦えますか』のCMのような

仕事第一の生活経験があるかと思います。

 

Tさんも、日本の高度経済成長期を支えた典型的な熱血サラリーマンでした。

 

ところが、50代半ばの会社の健康診断で精密検査が必要となり、結果は、大腸がん。

開腹手術(大腸の3分の1を切除)、療養しながらの仕事復帰となりました。

ご本人が思っていた以上に体力は落ちました。

 

『そういえば、自分には今の体力で続けられる趣味がないなぁ』と通勤途中で考えたTさん。

 

Tさんの趣味といえば、子供のころより野球、相撲とスポーツ観戦が好きで、学生・社会人時代は

ラガーマン(ラグビー競技者)。サラリーマンとしてはゴルフ。と運動がメインでした。

 

ある日、仕事が終わり駅に向かって歩く途中、【碁会所 初心者歓迎】の看板を見つけました。

 

『よし、ここで看板が目に入ったのは縁ある証拠。これだ!!』

 

スポーツ経験、営業職の経歴から試合の戦略を考えることは得意です。

高価な碁盤に碁石を揃え、仕事帰りに碁会所通いが始まりました。

 

ところが、囲碁の世界は奥深く、なかなか思い通りには勝てません。

あれこれ攻略本を読み漁り、道路わきの「墓石(はかいし)販売(はんばい)」の立て看板を

「碁石(ごいし)販売(はんばい)」と読み間違え店に入ろうとする始末。

 

定年退職、再雇用を経て、妻の故郷へ住まいを移し、

地元の碁会所と東京の碁会所を掛け持ちしながら腕を磨きました。

 

あれからやがて30年、

現在、80代寅年生まれのTさんは地域のデイサービスから声がかかり、

利用者さんの囲碁のお相手のとして月に数回ボランティアとしてデイサービスへ出かけています。 

『芸は身を助く』 人生の途中で出会った趣味が人との出会いを増やし、今日も楽しく過ごされています。