アイビー便り
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こんな夜更けにバナナかよ
- 2024年5月25日
- 院長のゆんたく
こんにちは、アイビー院長です。
大泉洋主演の映画も見ました。面白いと思ったけれど、最近たまたま本屋で原作文庫本を
見つけ読んでみると、これがさらに面白い。
初版2003年、文庫本初版が2013年(映画公開2019年)で、こんな遅くにバナナかよ、
といった感じもありますが、生きるということについて思索するヒントに満ちていると
思うので紹介します。
介護保険制度が出来る前の1990年代、福祉制度も不十分な時代に家族の介護を受けずに自宅で
過ごすことを選んだ筋ジストロフィー患者鹿野靖明と彼を支えた多くのボランティアたちのお話です。
この時代の日本では、筋ジスなどの難病患者は一生施設で過ごすか、自宅で家族の介護を
受けて過ごすかの二択しかありませんでした。
しかし1970年代よりアメリカで障害者の「自立生活運動」が勃興します。
「自立」とは、自分で収入を得て、自分で何でも行えることではなく、自分の人生を
どのようにしたいかを自分で決めること。そのために必要な支援を社会に求めるのは
当然の権利である、という主張と運動でした。
この運動から刺激を受け、まだ公的支援の不十分な時代に、鹿野さんは家族の介護を受けずに
自宅で生活することを決意します。
彼の生活を支えたのはボランティアたちで、その多くは無償の方々でした。こう話すと美談の
ような感じがしますが実際は、体を自分で動かすことが出来ず生きていくためにはすべて
他人の助けが必要な鹿野さんとボランティアたちの衝突でもありました
(興味ある方は本を読んでみて下さい)。
この本のテーマの一つは「他者との関わりかた、そこから見えてくる自分自身」ではないかと思います。
他人に迷惑をかけないで生きていきたいとか、ウンチやオシッコを人にとってもらうくらいなら
死んだ方がいいという方も多いかもしれません。
これは尊厳死の考え方につながると思うし、私もその考え方に近かったと白状しないといけません。
しかし、他人の助けを借りないといけない人がいるという事実を前にすると、その考えが揺らぎますね。
他人に助けてもらうことで逆に他人を助けることが出来るという可能性にも目を開かされました。
私たちも鹿野さんのように命を燃やして生きていきたいですね。
参照文献:渡辺一史 こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち 文春文庫 2019年
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