アイビー便り
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主治医意見書の記載について
- 2025年9月7日
- 院長のゆんたく
こんにちは、アイビー院長です。
今回の論文は前回論文の参照文献に含まれたもので発表が2002年と古いのですが、
介護保険施行からまだ年月を経ていないころの主治医意見書の問題点などが分かって
面白いのでご紹介します。
日本医師会雑誌の2002年(平成17年)7月号に掲載された「主治医意見書について」という総説です。
筆者の田中章慈さんは当時、和歌山市介護認定審査会会長で同市医師会副会長でした。
また昭和60年に開設した田中内科医院の院長でもあります。
2000年4月に施行となった介護保険ですが、本総説では2001年(平成13年)4月から12月までの525件を
対象として主治医意見書の記載内容を5つに分けて検討しています。
1.病名(診断名)
525件で総計1513病名が記載されていました。「慢性胃炎」などのような介護と直接因果関係のない疾患、
「膝変形性関節症」「変形性膝関節症」のような表現の混乱や同一疾患に多彩な病名が使用され病名種類の
算出は困難であったと述べられています。
また日本で認知症という病名が使われ始めたのが2005年(2004年12月24日正式決定)からで、ここでは
痴呆という呼称が使われています。
下記の主要病名とその頻度を見てみると、整形疾患や脳血管疾患、認知症(痴呆)が多くを占めています。
病名として最も多いのは高血圧症で、脳梗塞や認知症の背景因子として記載されていました。また片麻痺、
筋萎縮や筋力低下などの状態を表す症状を病名として記載することも当時多かったようです。
2.障害(生活機能低下)の直接の原因となっている傷病(または特定疾患)の経過及び投薬内容を
含む治療内容
筋疾患、呼吸器疾患、心疾患あるいは癌の終末期などでは調査員の評価と主治医の見解が乖離することが
時々みられ修正が必要になることがあると述べられています。
また心不全ならNYHA分類、パーキンソン病ならYahr分類、認知症ならHDS-Rなど病態の程度を記載する
ことの有用性が述べられています。
介護上留意する薬剤(服薬を怠ると悪化する可能性があるもの、服用方法・時間・用量などに注意を
要するもの)などを記載するという指摘は学ぶべきでしょう。
調査票の意図的な過大評価あるいは評価ミスによる過小評価を見出し、修正根拠を与えるのも本欄であり
充実した正確な記載が望まれるとありますが、私自身まだまだ修行が必要です。
3.特別な医療
疼痛の看護や点滴の管理などは調査マニュアルの定義を再検討する必要があると述べられています
(教えて林くんのR7年4-7月に説明あり)
褥瘡では重症度分類や部位、全身状態、治療内容や処置回数などが記載されると有用で欄外への記載が
望まれるとあります。
4.心身の状態に関する意見、介護(生活機能とサービス)に関する意見
日常生活自立度評価の重要性が指摘されています。
医師の認知症高齢者の日常生活自立度と調査員のそれが異なっていることがこの時から指摘されています。
これは介護度認定にも大きく影響することがあるので注意したいですね。
今後発症の可能性が高い病態とその対処方針についても下記表にあるように、参考になります。
感染症の有無についても感染性にとらわれず、再発を繰り返す膀胱炎や急性増悪を繰り返す慢性気管支炎など
も含むと解釈するというのは目からウロコでした。
5.その他特記すべき事項
今でもよく言われていますが特記事項の内容は認定審査でも重要な情報源となっています。
空白にならないように頑張って記入しましょう。疾患による機能喪失・低下が能力障害(disability)さらには
社会的不利(handicap)となっているかどうか言及する必要があると述べられています。
最後に、介護保険制度の最大の特色は高齢者を取り囲む地域多職種専門家の共同作業であり、ケアプラン作成過程
やサービス提供の場において指針を与えるのが主治医意見書に課せられた重要な役割であるとまとめられています。
参考文献:田中章慈 主治医意見書の記載について 日本医師会雑誌 128巻1号 2002年
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